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ナンダカンダ藤井流星くんのファンが書きたい時に更新するブログ

誰かを「選ぶ」ということ〜朝井リョウの武道館を読んで

武道館

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前々から気になっていた本がJuice=Juice主演でドラマ化すると知って、いいきっかけだなと思い早速購入し読んでみた。ディテールの細かさがリアルをより際立たせていて、アイドルを題材としたエンターテイメント小説というよりはこういう話が本当にありそうだなとアイドル好きな読者はつい思ってしまいそうな内容だった。だから読んだ人の感想でもリアルすぎてヒリヒリとした痛みを感じられるというようなものも見かけていたけれど、私は読みながら「作者はめっちゃアイドルが好きなんだなぁ…」と途中から思ってしまい、その好きって想いを否定しないように最後まで書かれていたから途中でボロ泣きしつつすごく救われた気持ちになった。

この本には「選ぶ」というフレーズが鍵のように要所要所で出てくる。アイドルになることを選ぶ。アイドルでいる自分よりも好きな男の方を選ぶ。ファンだって、数あるアイドルの中から自分だけの一番を選んでゆく。そうやって人はありとあらゆるものの中から選んで選んで、正しいものを見つけようとする。作中でも体調不良だと嘘をついて好きな人の元へと会いに行こうとリハを休んだメンバーがこう言う。「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」

正しい選択ってなんだろう。正解なんてないから自分であれは正しかったと思い込むしかない。例え辻褄合わせであっても、なかなか見つからないパズルのピースを探しては無理やりにでもはめ込んで正しかった選択にしていきたい。そう思い込みたい。そして、そのパズルのピースを1つでもいいから誰かにかちっとはめ込んでもらいたい欲というのも、ある。

ジャニヲタは「担当」と呼ばれる所謂「一番好きな人」を決めている人が多い。担当を決める時点で私も誰かを選んでいる。例えばその担当が自分の良しとしない事をしていた時。腹が立って怒れてくる理由のひとつに自分が選んで選んで選び抜いた選択が間違っていたんじゃないかと自己否定された気持ちになってしまうのもあるのかもしれない。だからといってそうなってしまう前に口うるさく、私の選択は正しいのだ、正しいものにしたいからあなたには絶対こうして欲しいと願望を押し付けすぎるのもファンの美学として私はかっこ悪い気がしてしまう。でも、君を選んだことを正しかった選択にしたいんだ。

アイドルを好きでいるのは本当に楽しい。でも毎日毎日アイドルの事だけを考えてもいられないし、現実は甘くないし、今できてない事だっていっぱいある。これからしなきゃいけない事や考えなくちゃいけない事は無限にある。アイドルを逃避先にしたくなくても人からそう見られていてもしょうがないなと思う事もある。それによって、日々を生きていく上でアイドルを好きでいる事を少しばかり心の支えにしてしまっているのも全部否定されたような気持ちになって悩む事だってある。

今年行われたジャニーズWESTのパリピポツアーではメンバーの重岡くんがアンコールに毎回自分の言葉でその時その時の気持ちを話してくれる時間があった。(詳しいまとめはこちらに→パリピポツアー全公演の重岡大毅さん挨拶まとめ - Togetterまとめ)
広島では「僕たちから貰ったパワーはちょっとかもしれへんけど、なんか学校嫌やけどちょっと早く行こうとか、あの上司腹立つけど明日は優しく笑顔で接してみようとか。こんな僕らでも力になれるなら幸いです。僕たちとこれからもずっとそんな瞬間を作っていきましょう」と言っていて、オーラスの神戸では「本当に僕らに、僕ら7人に会ったら楽しくなれる。笑顔になれる。それってほんま僕ら、素晴らしくて最高なことやと思ってます。そしてそれをそうやって出来るのが僕らジャニーズWESTやと思っていますし、それを叶えたいです」と挨拶した後、オーラスだけのアンコール曲として「バンザイ夢マンサイ!」を歌ってくれた。私がジャニーズWESTを好きなこと。それによってなんだか毎日ちょっと楽しいなぁとしあわせな気持ちになれていること。そんなささいな選択は正しかったんだよって肯定してもらえたような気がしたのを思い出した。ジャニーズWESTはきっと私のパズルのピースをそっとはめてくれる。

「何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」「私、今から菅野さんに会いに行くことが、ずっとずっとあとに自分の人生を振り返ったとき、正しかった選択になってる自信がある」「正しかった選択にする自信がある」
朝井リョウ/武道館